現状把握と定期的なメンテナンスは、投資で成果を上げるためには必要不可欠です。これは人間の健康と同じようなものです。定期的に健康診断をして現状の状態を確認し、既に問題があれば、程度が軽いうちに対処する、今すぐに問題がなくても後々問題が起きないように事前の予防策を講じておく。それによって、緊急事態が生じる可能性を最小限に抑えることができるでしょう。投資の見える化で、現状を把握し、丁寧な経営管理で投資の状態が悪化しないように確りメンテナンスしていきましょう。
本内容に関しては、その内容の正確性、確実性、妥当性及び公正性を保証するものではありません。また、予告なしに内容が変更又は削除される場合がありますので、予めご了承ください。
1. 投資の見える化の重要性
1-1. 正確な現状把握と問題点の発見
投資の見える化の大きな目的の一つは、その投資を組成した当人以外の人物でも、容易に投資の内容や、重要となるポイント、問題点を正確に理解できるようにすることです。投資の仕組みが複雑になるほど、時間が経過するほど組成した当人、それに間近で関わってきた以外の人が、細かい部分まですぐに把握するのは難しくなります。特に、物事の背景や経緯がきちんと書面やメール等で記録されていない場合、SNSメッセージで個々の携帯にしかデータが残っていない場合は、第三者が過去に遡って、確認していくのは至難の業です。投資の現状把握をしっかり行うためには、この投資の見える化を実施し、定期的にアップデートすることが望ましいと言えるでしょう。それをすることにより、問題点の早期発見につながります。
1-2. 立ち位置の再認識
投資の見える化を進めていくと、途中で必ず、なぜこのような内容になっているのか、どんな手当てが当初想定されていたのかなど、様々な疑問、質問が出てくるのが普通です。それらの疑問を突き詰めていくことで、投資を実行した自らの立ち位置や、その後の意思決定を行う上での尺度を再認識することができるでしょう。過ぎた時間を元に戻すことはできませんが、振り返りを行うことで、それが次の一手を打つ際の助けになります。
1-3. 属人化・問題隠蔽の防止
先に述べたように、投資の検討、実行に関わった人以外には、その経緯や背景、現時点での問題点を含めた状況が見えにくいことがよくあります。もちろん、人的リソースが十分にある場合で、複数の目が同時に入っている場合には心配がないかもしれません。一方で、それなりに規模感のある投資でないと人的リソースとの経済性バランスが合わないこともしばしばです。投資の検討、実行、管理の属人化が進んでいくと、表面的には状況を把握できても、細かな実態が見えない投資のブラックボックス化が起きてしまいます。致命的な問題が生じていなければ良いですが、問題の発見が遅れたり、適切な対処が間に合わず、大きな損失に繋がる可能性もあります。意図しない場合ならまだしも、意図的に問題が隠蔽されるようなことがあると事態はより深刻化してしまいますので、注意が必要です。
1-4. シナリオ構築と見直し
投資の状態を正確に把握することで、課題を整理し、今後想定され得るシナリオを作ることができるでしょう。基本シナリオに加えて、楽観シナリオと悲観シナリオを想定しておくと、上振れにも下振れにも対応できます。大きな方向感が見えてくれば、各シナリオに沿って、細かな対応方針も決めやすくなるでしょう。投資期間にもよりますが、短期から長期までの時間軸の前提条件も入れておくと、その後のシナリオの見直しにも役立ちます。投資を成功させるためにも、シナリオを定期的にアップデートすることが肝要です。
2. 経営管理の重要性
2-1. 当初投資計画との差異把握
当たり前のことのようで、面倒や煩雑なため、当たり前にできていないことがあります。精度も去ることながら、頻度が少なく、適切なタイミングで当初計画との差異を理解できていない場合もあるでしょう。また、差異を数値として記録しているだけで、その数値の背景や原因を分析できていないこともあるかもしれません。小さい差異、上振れ要素の差異ならともかく、それ以外の差異は当初投資計画の分析が不十分であった可能性、当該計画の妥当性を問われることにもなります。差異を分析し、計画を補正していくことで、その精度を高めていくことができますし、次の投資計画を作成する際にベンチマークとなるデータを作り上げていくことができるでしょう。
2-2. トラブルの予兆察知
投資計画の差異を定期的にモニタリングしていくと、最初にはなかなか見えてこなかった課題や、次に起こるかもしれない問題点のパターンが見えてきます。例えば、株価を毎日チェックしていれば、その動向や相場観をつかんでいけるように、投資計画においても、少なくとも月次での管理を徹底することで、余程の突発的事象でない限り、トラブルの予兆を事前に察知することができるでしょう。
2-3. コスト削減・リソースの最適化
差異分析の結果として、当初投資計画では見えてこなかった、または保守的に見積っていた部分のムダを発見できれば、コスト削減につながるでしょう。特に計画を立てる時には、基本シナリオより少し多めにコストを積み増したり、コンティンジェンシーとして予備費を入れるケースが往々にしてあります。一方で、コスト高になっている項目が発見されることもあるかもしれませんし、部分的にリソースが足りずに、費用項目自体が増えていくことも考えられます。その場合は、削減したリソースを増加したところに充当する等、計画的に最適化を図ることができるでしょう。
2-4. 有利な資金調達
外部からの資金調達を検討する時に、必ず準備しなければならないのは投資や事業に関する計画です。過去の実績はもちろんのこと、将来に向かってどのような結果が期待できるのかを、収支モデルを含めて論理的に説明できなければなりません。また、投資のリターンを高めるために重要な要素は何か、途中で問題が起きる可能性はないのか等を突き詰めて検証することになります。日頃から経営管理、投資の管理を丁寧に実践し、それに対して意識を傾けていれば、外部からの資金調達交渉に耐え得る資料作りも苦にならなくなるでしょう。
2-5. 正確な投資リターンの算出
投資リターンはざっくりと分かれば良い、時間軸は考慮せず、単に投資倍率しか見ていないという場合は、精緻に投資リターンを計算すること自体が負荷になってしまいますが、投資期間中に様々な意思決定を行うに当たって、その時点においての投資リターン、その後のシナリオ別の投資リターン予測をできるかどうかで、最終的な成果が大きく変わることも少なくありません。なぜなら、その時々の収支状況次第で意思決定の判断軸が変わる可能性があるためです。また、正確な投資リターンの算出は、投資のエグジットのタイミングを考える上でも、非常に役立つでしょう。
2-6. 取引関係者との定期コミュニケーション
経営管理をしっかりと定期的な頻度で実施しようとすると、当然ながら当該投資でやりとりをしてきた取引関係者とのコミュニケーションが必要になってきます。自動的に入ってくる情報もあれば、そうでない情報もあると思われますが、事業投資の場合、全部自動化されているというケースはほとんどないでしょう。能動的にコンタクトをしないと情報を取れない取引関係者の場合、経営管理の頻度が少なく、深度が低いと、時と共に情報が入りにくくなったり、その質が悪化していきます。逆に、定期的なコミュニケーションを心掛けていると、良くも悪くも様々な情報が早いタイミングで入ってくることになります。
2-7. 円滑な遠隔管理の実現
海外投資の場合、当該投資を管理している人間が複数居て、それぞれが別の国や地域に居住していることも珍しくありません。丁寧な経営管理の実践は、遠隔管理の精度向上につながりますし、何より透明性を確保することにより相互の信頼関係にも良い影響を与えるでしょう。ITの普及により、オンラインサービスが充実している現在では、場所を選ばずに管理の質を高めていくことができる環境になってきています。