【保存版・随時更新】海外投資を決断する前に、検討すべきリスク一覧

一体何をリスクとして検討するべきなのかを極力体系的にまとめています。事業への投資なのか、資産(完成しているか、いないか)への投資なのか等によって、ある程度の差があるので、全ての投資機会に全ての尺度を当てはめることはできませんが、検討を進めていく上での分析項目として役に立つでしょう。

本内容に関しては、その内容の正確性、確実性、妥当性及び公正性を保証するものではありません。また、予告なしに内容が変更又は削除される場合がありますので、予めご了承ください。

1. 外部環境

投資機会個別のリスクを検証する前に、まずはマクロ的視点で経済や政治のリスクを見ておく必要があります。既に投資対象国についての一定の知見や投資経験があれば、感覚値も含めておおよそのリスクは把握できていると思われますが、新規の投資対象国、アセットクラスである場合、特に新興国の場合は、表面的には見えにく規制等のリスクもあるので注意が必要です。

1-1. 経済リスク

1-1-1. インフレ

投資期間が長期に渡るケース、経済成長著しい国や地域に投資するケース、政情不安定な新興国に投資するケースでは、物価変動が投資リターンに大きく影響する可能性があります。インフレに強い資産への投資であれば、コストが上昇しても実質的な影響は限定的と考えられますが、そうでない場合は製造原価や人件費等のコスト構造の変化が、投資事業自体に与えるインパクトは小さくないでしょう。

1-1-2. 金利変動

投資しているプロジェクトで借入を行なっている場合や、投資の自己資金自体に借入によるレバレッジがかかっている場合は、金利変動による投資リターンへの影響が出てきます。世界的な低金利の効果もあって、主に先進国では借入を増やした方が出資のリターンは高まる一方、新興国の現地通貨ベースではまだまだ金利水準も高く、借入による金利負担や返済のリスクが相対的に高いと言えるでしょう。

1-1-3. 通貨・為替変動

自国通貨の日本円での投資であれば、神経質になる必要はないですが、米ドルやユーロ以外の通貨の場合は、為替の変動のみならず、通貨自体の換金性等も確認しておかなければなりません。例えば、許可がなければ他の通貨にすぐに換金できないケースもあります。為替変動については、グローバル経済の動向に大きく影響されますし、通貨によっては短期的な変動が激しいものもあります。投資した通貨ベースではリターンが出ているのに、自国通貨ベースに直すと損をしているという様な状況にならないように、投資のタイミングには注意が必要です。

1-2. 政治・法律リスク

政治や法律のリスクは、どの国への投資において留意すべきポイントとなりますが、新興国の場合は政治体制や法律自体が脆弱であったり、突発的な変更が起こり得るので、実行した投資が根本からひっくり返らないようにリスクを見極めることが必要です。

1-2-1. 政情不安・カントリーリスク

国によっては、投資対象そのもののビジネスリスクよりカントリーリスクの方が大きいというケースもあるかもしれません。政治的なリスクや、カントリーリスクは格付機関が出している指標や、その他政府や金融機関が出している情報、レポート等を参考にすると良いでしょう。

1-2-2. 行政手続

投資の実務的に行政手続のスムーズさや透明性、オンライン対応の有無は重要な要素となります。現地に行かないと正確な情報も取れないし、手続きも進まなかったり、そもそも行政手続自体が不明瞭で、同じ方法でも上手くいかなかったりすることもあります。オンラインでのやりとりもできないと、機動的な対応もできないでしょう。国によっては、必要な手続きを終えても、完了するまで相当の期間を要することも珍しくないですし、フォローアップを怠るといつまでたっても完了しないこともあります。

1-2-3. 法令・規制変更

政治の状態や体制にもよりますが、突然に新しい法令が施行されたり、法令や規制の変更が行われることがあります。突然でなくても、外国人にはその国の法律動向を正確かつタイムリーに把握するのは、言語の壁もあって難しいことが多いでしょう。規制緩和であれば、参入障壁の低下と共に競争激化につながるかもしれませんし、規制強化となると当該投資事業の継続が困難になるケースも起こり得ます。

1-2-4. 外貨・外資参入規制

先進国では比較的自由度が高い傾向にあるものの、通貨(自国通貨と現地通貨)の換金や、業種に応じた出資持分規制(一律に規制されている国もあります)によって、現地資本の共同パートナーがいないと法人設立すらできないこともあります(現地居住の取締役が必要な場合もあります)。このような規制によって、自らの出資持分だけでは、完全にコントロールできない投資ストラクチャーにならざるを得ないこともあります。

1-2-5. 係争・裁判

係争や裁判になると、一般的には外国人の立場は現地人と比較して弱いと言わざるを得ません。言語の壁や、その国の裁判のプロセスに慣れていないということも考えられますが、国によってはその裁決の過程や根拠が不明瞭で、事実上外国人が入り込む余地がないこともあるでしょう。または、裁判自体に相当の時間がかかり、継続するだけで多大なコストを要することもあります。友好的な関係のうちは問題ありませんが、現地人との共同投資の場合はトラブルが起きると複雑になりがちなので注意が必要です。

1-2-6. 強制収用

強制収用は特定の投資に限られますし、余程のことがない限り発生しませんが、リスクの一つとして認識しておきましょう。

2. 案件個別

マクロ的な諸リスクの検証が終わったら、次に案件個別のリスクを見ていきます。事業投資なのか、特定資産への投資なのかで検証してく角度、範囲がやや異なりますが、この段階においてはできる限り深掘りしていくことが重要となります。また、楽観的に評価した場合、悲観的に評価した場合も加え、リスクの振れ幅も想定しておくと良いでしょう。基本的に、全ての項目において楽観的な結果を望むことは難しいので、その点は念頭に置いておきましょう。

2-1. 事業性リスク

2-1-1. マーケット規模・成長性・安定性・成熟度

一般的にマーケットの規模が小さいと、それだけ参入プレイヤーが少なかったり、検討のための十分なデータが得られなかったり、投資の流動性に乏しかったりする傾向があります。他方、参入障壁が高く、限られたプレイヤーだけが利益を享受している場合もあります。有望なマーケットと目されていて、これから成長性は見込めるが、まだ黎明期ということもあるかもしれません。いずれにしても、ある程度の規模感のあるマーケットでないと、万が一行き詰まった時に処分するにも苦労しますし、成長性の低いマーケットだと投資価値の大幅な上昇を期待できない可能性があります。マーケットの成熟度が高い方が、過去のデータや指標も豊富にあると考えられますので、安定的な投資を志向している場合は都合が良いでしょう。

2-1-2. 事業・資産の質

ありふれた種類の事業や資産への投資の場合、その事業や資産自体の競争力や希少性が投資価値に直結してくるでしょう。誰もが欲しいような希少性の高い投資だと、外部環境が変化しても時間が経過しても、一定の資産価値を維持しやすくなります。一方で、競争力や希少性、際立った特徴がないと、比較可能な他の投資機会の中に埋もれてしまい、価格競争に巻き込まれてしまうでしょう。単純比較が難しい種類の事業への投資の場合は、その質を見極められるだけの知見を持っていなければ、リスクを正しく評価することができないので注意が必要です。

2-1-3. 権利取得・移転・登記

資金投下と同時にその対価として当該投資の持分を取得したり、投資エンティティが事業や資産を取得する場合、その権利移転や登記の確実性、時間軸をリスクとして認識しておく必要があります。各国の行政制度に依存する部分もありますが、資金投下から効力反映までの間に空白期間が生じないか、曖昧な解釈が生じないか、共同パートナーがいる場合、資金を持ち逃げされるリスクがないか等を慎重に確認していくことが望まれます。実務的にエスクロー制度等が使える場合は、それらを活用することもリスク軽減策となります。

2-2. 開発・完工リスク

開発行為を含んだ事業投資、資産への投資を行う際に検討すべきリスクとなります。既に完成している資産で、投資期間中はその運用だけに留まるケースでは直接的には関係しないでしょう。

2-2-1. アクセス性

開発する事業資産や資産への物理的なアクセス性は、その資産価値に影響を与えます。特に立地自体が価値の大部分を占めている資産クラスの場合は、アクセス性は極めて重要な要素となるでしょう。また、アクセス性は事業の費用サイドにも関係してくることがあります。アクセスが悪ければ非効率になり、資材を調達するにしても、人を雇うにしても余計な費用が生じるかもしれません。

2-2-2. 許認可

許認可リスクは、開発プロジェクトにおいて極めて重要性の高い項目の一つです。なぜなら、予定通りに許認可を取得できなければ、計画で想定する将来の資産価値を実現できなくなるためです。許認可取得自体も去ることながら、時間軸を考慮した時の投資リターンにおいて、遅延の可能性も大きなリスクとなります。事前に細かなプロセスを検証しておくことが大切です。特に新興国では、現地言語の壁も含め、許認可の手続きが不透明であることも少なくないので、保守的に評価しておくのが望ましいでしょう。

2-2-3. コントラクター・請負企業

2-2-4. コストオーバーラン

2-2-5. タイムオーバーラン

2-2-6. 質・性能

2-3. 事業運営リスク

2-3-1. 運営企業

2-3-2. 技術力

2-3-3. ITシステム

2-3-4. 調達・仕入れ

2-3-5. コストオーバーラン

2-3-6. 経年劣化・修繕

2-4. 財務リスク

2-4-1. 財務指標

2-4-2. 借入・レバレッジ

2-4-3. リファイナンス

2-5. キャッシュフローリスク

2-5-1. 収入と支出の契約期間・条件

2-5-2. 収入の分散化

2-5-3. 収入の確実性:オフテイカーリスク、債務不履行リスク

2-5-4. 取引価格の変動:需要と供給

2-5-5. 稼働・回転率

2-5-6. 費用増加:販管費、手数料、修繕、人件費

2-6. 流動性リスク:売却・処分と価格変動

2-7. 環境リスク

2-8. 不可抗力リスク:災害

2-9. 契約書リスク

2-9-1. 経済的利益:インセンティブ

2-9-2. 資本の増減

2-9-3. 責任範囲:損害賠償

2-9-4. 意思決定ルール:デッドロック

2-9-5. コベナンツ・デフォルト条件

2-9-6. 権利・担保の確保と実効性

2-9-7. 保証・スポンサーリコース

2-10. 会計・税務リスク

2-10-1. 財務・監査の管理

2-10-2. 各種税金:所得税、法人税、源泉税、移転価格税、付加価値税

2-11. 第三者評価

2-12. 維持管理費用:費用対効果、ストラクチャーコスト

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