海外投資に限らず、投資を検討していく際に避けて通れないのが、各種取引関係者への支払報酬についての交渉、取り決めでしょう。報酬水準が定まっていないと、各種取引関係者にとっては動く理由がありませんので、スムーズに検討を進めるためにも、必要以上に時間をかけずに決めることが望まれます。
大抵の場合、リテーナー報酬(定額、超過金額の定期支払、タイムチャージの定期支払)ないし、成功報酬(例えば、取引金額の数%)、ないしその両方の組合せが想定されるでしょう。
投資家の視点では、全てを成功報酬にすれば、すぐにはコストが発生しませんが、取引関係者の視点から見ると、その不確実なビジネス機会に対して、優先度が下がってしまうかもしれません。
冷やかしではなく、本気で投資機会を検討し、実行することが見込まれるのであれば、基本的にはリテーナー報酬をベースに進めるのが合理的と考えられます。理由となるのは、以下のポイントです。
実質的な支払負担
検討にどれくらいの期間をかけるのか、複数社に同じ業務を依頼するのかどうか等にも拠りますが、一般的には実質的な費用負担は成功報酬の方が高額になるでしょう。成功しなければ、報酬が貰えないのですから、論理的にも正しいと言えます。
例えば、成功報酬の場合で、1億円の取引に対して3%の報酬が発生すると仮定して考えてみましょう。実際に成約すれば、300万円の支払が発生します。
極端な例かもしれませんが、投資を1年以内に行おうと本気で考えていれば、この前提だと月額25万円の負担と同額になります。営業日の計算で言えば、1営業日1万円以上の負担をしても、成り立ちます。
半年で投資実行に至れば、実質的に報酬を半額に節約したことになるのです。
良好な取引関係の維持
金銭的なことも去ることながら、取引関係者との良好な信頼関係を継続することも極めて重要です。
成功報酬の場合、取引が成約し、報酬が入金された瞬間から取引関係者とのやりとりが希薄になるというケースも珍しくはありません。特に一度きりの取引になる時や、近い将来に次の取引が起こる可能性が低い時には注意が必要です。
その観点では、リテーナー報酬は相対的に安全です。定期的に報酬が発生しているので、取引関係者としても親身に対応するインセンティブが働きます。また、取引関係者との定期的な接点も作りやすくなるので、有益な情報が入ってきやすくなるでしょう。
会計・キャッシュフローのインパクト
一般的に成功報酬の場合は、成約時に一括払いになることが多いでしょう。つまり、一回の支払いで相当な金額のキャッシュアウトが伴うことになります。それはキャッシュフローだけでなく、会計上の負担が大きくなることも意味します。
一方で、リテーナー報酬の場合はその費用が平準化されます。突然のまとまった支払が発生しにくいので、キャッシュフローの面でも安心と言えます。