専門家が語る、先進国と新興国向け投資のリターンとレバレッジとは

先進国の投資機会は、比較的安全だけれど期待リターンが低い、新興国の投資機会はそれなりにリスクが高いので期待リターンが高くないと割に合わないからダメ、と盲目的に思い込んではいないでしょうか。

確かに、総論としてマクロ指標に注目すると、そのように感じるかもしれませんが、実際に個別の投資機会でみていくと、必ずしもそうではありません。新興国でも、希少性の高い資産への投資の場合、期待リターンの水準は先進国並みに低いことは珍しくありません。先進国でもそれなりに期待リターンの高い投資機会は存在します。

また、投資実行する時、管理・回収する時の取引コストも無視できません。平均的には、新興国の方が、先進国よりもコスト高(絶対金額というよりも、投資規模に対する割合の観点で)の傾向があります。表面の期待リターンが高くても、コストが多くかかれば、実質リターンが低くなる懸念があることは、常に頭に入れておかなければなりません。

そもそも論にはなりますが、先進国、新興国に関わらず、その投資機会に対して、割安で投資できたかどうか、フェアバリューだったか、高値掴みしてしまったか、ということの方が期待リターンを達成できるか否かに直結するでしょう。

投資する分野にも拠りますが、取引の透明性(取引事例の多さ)という意味では、大抵の場合は先進国に軍配が上がります。すなわち、基本的には、先進国の方が高値掴みをするリスクが小さいことを意味します。

借入と金利水準

借入によるレバレッジを含めた観点ではどうでしょうか。借入の難易度は、国ごとの個別性があるものの、金融市場のインフラ環境が整っているという意味では、先進国の方がそのプロセスが確立されているケースが多いでしょう。

新興国においては、現地通貨での借入金利水準が高く、多くの投資資金を借入で賄っても、あまりレバレッジがかからず、借入の返済リスクだけが残ることがあるので注意が必要です。どうしても借入が必要な場合は、為替リスクを取ってでも、金利水準の低い主要通貨でバックファイナンスを受けた方が、返済リスクの観点では望ましい選択肢と言えます。

必要な自己資金

借入によるレバレッジを得られなければ、その分自己資金が必要になります。例えば、先進国の投資機会では、レバレッジを得て期待リターンを上げつつも、自己資金を減らすことができます。一方で、新興国の投資機会では、(現地通貨による)借入のレバレッジを活用することが難しいケースがあり、その投資機会自体の期待リターンは高くても、自己資金を用意しなければなりません。

先進国の投資機会のレバレッジ後の期待リターンと、新興国の投資機会のレバレッジ前の期待リターンとが同水準、かつ同等の投資規模を仮定すると、期待リターンは同等なのに新興国の投資機会への投資の方が、必要な自己資金が大きくなってしまうのです。

相当の期待リターンを新興国の投資機会に求めていたはずなのに、かえって先進国のそれよりも投資条件が悪化してしまうことが普通に起こり得るのです。もちろん、自己資金に余裕があれば、ハイリスクハイリターンの投資機会も含め、新興国での投資の選択肢も広がりますが、エントリーとしては先進国向けの方が、各種リスクを抑えやすく、条件的に検討を進めやすいケースが多いと考えられます。

借入による為替ヘッジ

投資対象の通貨と、自己資金の通貨が合わなくても、投資対象の通貨と現地借入通貨が一致すること、投資の回収と期中のキャッシュインフローがその借入通貨と一致することの両方の条件が揃えば、借入による一定程度の為替ヘッジ効果が期待できます。

借入によって、期待リターンを高めるためのレバレッジがかかる一方で、返済リスクにより、その投資の安定性を欠くのではないかと心配になりがちですが、借入の仕方によってはむしろリスクを減らす側面があることも忘れてはならないでしょう。


海外投資の悩みを早く解決したい

具体的な個別相談をしたい