海外投資に限らず、投資には様々な取引・管理コストがかかります。ここでは、投資の検討段階からクロージング、その投資実行後のエグジットまでを含む、総合的なコストについて考えてみます。
時間とコスト
取引・管理コストといっても単純にキャッシュの出金だけを見ておけば良いということではありません。例えば、時間的なコストも測定すべき大きな要素になります。想定する投資計画と比較して、遅延が生じていれば、それが追加的な負担になってしまいます。
時間に比例して固定費は増えるのに、収入が同じ比率で増えるとは限りません。下手すると、収入は増えることなく、コストだけが積み上げることにもなりかねません。時間経過による資産価格等の上昇も見込めなければ、当該コストと将来的に相殺し得る含み益も得られません。
計画段階において、時間軸まで考慮した損益を想定していない場合があります。時間軸があまり影響を与えない種類の投資もありますが、特に事業や資産を開発し、開発完了後にキャッシュフローが得られるケースや、開発完了を前提として高値でエグジットするようなケースでは、遅延することがコスト面で致命的に影響することもありますので、保守的なシナリオをあらかじめ検証しておくことが望まれます。
直接コストと間接コスト
直接コストと間接コストの違いも認識し、投資対象単体の直接コストだけに着目しないように気をつけなければなりません。
投資自体から、相応の投資リターンが得られていても、それを運用する主体(特に法人の場合)を維持するための人件費等の間接コストが膨大であれば、投資事業全体を俯瞰した時には赤字になってしまいます。言い換えれば、投資リターンを%の基準で達成していたとしても、投資規模がコストに対して十分でなければ、コスト倒れしてしまうということです。
そのような事態を防ぐために、取引・管理コストについて、投資規模に比例して%で増える種類の費用と、投資規模にかかわらず、絶対的な水準で発生する費用とを分けて、投資計画を策定する必要があるでしょう。なお、後者の費用は投資規模が大きくなればなるほど、コスト全体に占める割合が下がることになります。
ストラクチャー変更とコスト
当初、出たとこ勝負の気持ちで投資のストラクチャーを構築していると、その後、想定外に変更(資本構成の変更等も含む)が必要になった際に、本来不要なコストが多大に発生することになりかねません。
例えば、登記のし直しや、それらの手続きの手数料、諸税金などです。大掛かりなケースでは、取引関係者らとの契約書を抜本的に修正変更する必要がでてくることもあります。関わる人が多くなれば、見えない間接コストとして、人件費相当も実質的に大きな負担になります。それらが投資リターンを押し下げてしまうのです。
多少のコストで解決するならまだしも、変更コストが重荷になって身動きが取れなくなってしまうことは避けなければなりません。投資ストラクチャーを、極力はじめから最適化できるように、柔軟に変更できるように、中長期的な投資計画とストラクチャーを検討することがコスト面でも重要になります。