喜ばしいことに、居住地を選ばずに、直接的に海外投資ができる時代が到来してきました。投資対象国、投資対象物によっては、少なからず法律上の制約があるものの、投資ストラクチャーを工夫することで、低コストで過度かつ不要なリスクを取らずに、海外投資が可能になってきていることも事実です。
一般的に、投資対象国に居住するのが、最も情報格差がなく、法律上の制約を受けにくくなりますが、誰もがその投資対象国に住めるかというと、そう簡単ではありませんし、その国に住みたいかどうかと、その国のビジネスや資産に投資したいかどうかは別問題です。また、複数の国に投資する場合、その複数の国に同時に居住することも現実的ではありません。
つまり、ほとんどのケースにおいては、投資家の居住国と投資対象国は一致しないことになるでしょう。
物理的な距離が近ければ、比較的簡単に、気軽にその投資対象国に行くことができますが、現代においては、遠くても飛行機で1~2日かければ、ほとんどの世界の主要都市には駆けつけることができます。心理的な距離を遠く感じる場合があっても、海外との間の移動に慣れてくると、実際にはそれほど遠くないこと(行こうと思えば、すぐに行けること)がわかってきます。
どこに住んでいても全く同じとは言いませんが、大都市に住んでいようが、地方都市の人里離れた場所に住んでいようと、その優位性の差がどんどん縮まっていることは紛れもない現実です。むしろ、投資の型がある程度できてくると、ベースコストの低い場所にいた方が、投資のみ(他の生活条件等を勘案しなければ)に着目した時に有利と言えるかもしれません。
情報格差の縮小
外国人を含め、投資機会の情報取得の格差は縮まっています。相当数の情報はオンラインで取得できますし、SNSやその他コミュニケーションツールを使えば、直接現地の取引関係者や専門家にタイムリーに連絡を取ることができます。遠隔で、投資家の嗜好に合った投資機会の探索を依頼することも、珍しいことではなくなっています。
重要なことは、信頼できる現地の取引関係者との間で、良好な関係を構築することです。それさえ出来てしまえば、情報格差がほとんどなくなり、投資機会の探索から、実行、管理、回収までの全てのプロセスが安定することでしょう。
ITインフラと機器の充実
通信インフラだけでなく、ハードウェアの機能向上にも目覚ましいものがあります。比較的低価格の機器でも、映像・画像の視聴には問題ないですし、スマートフォンひとつで、コミュニケーションから決済まで、どこにいても出来るようになりました。
クラウドベースのソフトウェア等、利便性の高いサービスが増えることで、一昔前までは高額だったもの(しかも一括で支払う必要があったようなもの)が、低価格で利用できるようになりました。それが、海外投資を推進するうえで、ハードルを下げる要因となっています。取引コストが膨大で、一定規模以上でないとコスト倒れしていたような投資機会が、今では採算が取れるのです。
居住国の特性把握
個人にしても、法人経由にしても、投資するエンティティの居住国(居住性)には、細心の注意を払う必要があります。居住国(大都市であるかどうかに関わらず)によっては、随分と前提条件が変わります。法律上の制約有無の観点もさることながら、税務上のリスクが発生することもあります。
想像もしていなかったようなところで課税される、期待リターンが目減りすることは避けなければなりません。一方で、目先の節税にこだわりすぎて、投資ストラクチャーを構築するコストが増加し、結果的な手残りが減ってしまうような本末転倒な事態にならないように、気を付ける必要があります。