専門家が語る、投資を同じ尺度で評価する方法とその重要性

特定の狭い分野の投資だったとしても、投資機会を同じ尺度で測定、評価していくことは結構骨の折れる仕事です。上場株式等への証券投資のように、規格が定まっているものであれば、公開情報を含めた膨大な情報から、定量的に分析して評価していくことが比較的容易と考えられますが、事業・資産向けの投資のように、個別性の強い投資機会においては、その前提条件によって評価の方法に、ある程度の幅が出てきてしまうでしょう。

評価の種類は大別すると、定量評価と定性評価の二つに分かれますが、投資においては原則的に定量評価を優先すべきでしょう。もっと言えば、定性評価についても、最終的には数字に置き換えて定量的な尺度で、結果を検証することが望ましいと言えます。

定量評価については、KGIやKPIのような手法を使って進捗管理と評価をすることができます。もちろん、結果が重要なのは言うまでもないのですが、結果に至るまでの予測を事業計画(P/L、B/S)、キャッシュフロー表まで落とし込んで、そのプロセスと時系列で見たときの物事の整合性が取れているかどうかをしっかり把握することが求められます。ありがちなパターンは、一見すると予測結果と主要な前提条件は違和感のない範囲に収まっている一方で、その時系列の整合性、会計・キャッシュフローの流れを検証していくと、全く現実的な計画になっていないようなケースです。

定量評価、定性評価の尺度のピントが外れていると、最初から失敗が約束されたようなものです。威勢良く始めたものの、途中で事の深刻さに気付き、取り返しのつかないような事態にハマることだけは避けなければなりません。

ベンチマークの策定

評価の基準となるベンチマークは、多ければ多いほど良いと言うわけではありません。質と量のバランスが大切ですし、それらの項目をどれくらいの頻度で評価していくかという点も、十分考慮しなければならないでしょう。

上記でも触れた通り、まずは事業計画、キャッシュフロー表、リスク分析における評価項目をベースに、定量的及び定性的な基準を洗い出すことから始めると良いでしょう。最終的には重要性に優先度をつけて、主要な評価指標は10程度までに抑えることが運用面を考えたときに効率的です。評価項目が多すぎるとかえって総合的な評価をしにくくなったり、管理負担が重くなり過ぎます。

また、評価、進捗管理の頻度(評価の上書き含む)は、基本的に月次、ないし四半期をおすすめします。評価するための負担が大きいものや、短期での評価が難しいものについては、一括のおさらいとしての年度評価で問題ありませんが、進捗管理の間隔が広くなりすぎると、状況が悪化した時に把握するのが遅れてしまいます。

共有スプレッドシート

協力者も含め、複数人で評価、進捗管理を行う場合には、リアルタイムで共有が可能なスプレッドシートを活用することを強くおすすめします。有料アプリ等も利用すれば、大部分を自動化できる可能性もありますし、常日頃から情報をアップデートしていくことで、まとめて大きな作業をする手間も省けます。

途中経過の透明性を確保できる点もメリットです。評価の結論だけ見せられても、その期間の動きが分かりにくいことがありますが、いつでも共有のスプレッドシートを覗き込める状態にしておけば、関係者間の牽制機能にもなるでしょう。

差異分析と意思決定の基準

同じ尺度で評価、進捗管理することは、感情に左右されにくい均一な意思決定に役立ちます。複雑な投資機会になればなるほど、見るべき観点が増え、評価が割れるケースも想定されます。客観的な目線で差異分析を実施できなければ、意思決定の軸がブレて、ありもしない方向に進んでしまうことにもなりかねません。

また、複数の投資機会を、比較する場合にも、同様の評価項目を持っておくことが大切になります。無理やり全ての尺度を合わせる必要はありませんが、主要となる共通目線を、投資目的に基づいてあらかじめ決めておくことで、エグジットや追加投資のタイミング、その優先順位を検討する時に助けになるでしょう。


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