会社経営において、経営理念がはっきりしないと迷走してしまうのと同様に、投資においてもその目的が曖昧だと、釈然とせず、直面する様々な局面で失敗する確率を高めることになるでしょう。困った時、悩んだ時に、初心に帰るための基準がしっかりあるかないかで辿る道が全く違ったものになります。
結果的に上手くいくこともありますが、短期的な利益追求に傾倒し、本来の投資目的を忘れてしまう、軽視してしまうと、目先の判断の繰り返しになり、何のために時間と手間をかけて投資活動をしているのか見失う危険性さえあります。
投資機会の選定ミス
まず、投資目的が曖昧になっていると、膨大にある投資機会の中から、本来投資したいものを見つけるのが難しくなります。投資対象には、色々な種類があり、それぞれ一長一短があります。軸が定まっていないと、どの選択肢もそれなりに魅力的に映ってしまい、何から手をつけるべきか考え込んでしまうかもしれません。
投資対象に加えて、業界や分野含めた投資基準もはっきりしていないと、ある程度の範囲の投資機会をふるいにかけるだけでも、相当の時間とコストを費やさざるを得なくなるでしょう。本当に投資したい対象を見つけ、期待するリターンを叩き出すためには、効率的に進めていかなければ、途中で各種リソースが持たなくなってしまうでしょう。
一番危険なのは、海外投資はこんなものだろうと目的や基準にあまり合致していない目の前にあるものに、結果的に投資してしまうことです。
そのような場合は、大抵、目的をきっちりと最初から明確に決めていれば、回避できることがほとんどです。流動性の高い上場有価証券であれば、やり直しと軌道修正が楽ですが、事業・資産向けの投資では期間のリスクを取っているケースが多いことから、すぐに方向転換することは容易ではありません。このような選択ミスは何としても避けたいところです。
不安定な意思決定
投資件数が増え、ポートフォリオを構築できる規模感になってくると、いずれかの投資から定期的に意思決定課題や、問題が発生してきます。些細な課題や、やるべき対処方法に迷いがないものは、特に気にする必要もありませんが、問題が複雑化していたり、取引関係者との間の利害関係が一致しないような選択肢が存在する課題が発生した場合には、要注意です。
目的がはっきりしていないと、短期的な視点に陥りやすく、一貫性のない意思決定を誘発してしまうリスクがあります。これは自らの問題にもなるのですが、その投資に複数の取引関係者が関与している場合、相手から見ても右往左往するやりにくい投資家に映ってしまい、交渉等で不利益を被るリスクが増えてしまいます。
軸がぶれ、優柔不断になることはデメリットでしかありません。投資目的に沿って、思い切って決断すれば上手くいったかもしれない選択肢を見送ることで、自ら成功機会を潰すこともあるでしょう。
モチベーションへの影響
一定の手間のかかる投資に、継続して力を注ぐためには、期待リターンが得られていることと同時に、モチベーションを高く保つための精神的な要素が欠かせません。しかも、一過性のものではなく、志というと大袈裟かもしれませんが、自らの投資に対する価値観を持てるかが、極めて重要なのです。それなしに、長続きさせようとすると投資活動自体がストレスになってしまうでしょう。
目的を失い、関心が低くなってくると、段々と目が行き届かなくなりますし、当然のことながら、周囲もそれに気付きます。周囲のモチベーションまで下げてしまうと、悪循環に陥り、投資自体のパフォーマンスにも影響が出かねません。その意味では、根本にある投資目的は、初めから最も注意を払うべき項目のひとつと言えるのです。