むやみやたらに投資の数を増やすと、一つ一つの投資に監視の目が行き届かなくなるので、注意が必要ですが、一方で分散効果が見込めるので、投資の数を増やすこと自体は悪くありません。海外投資の場合は、慣れない、リスクが見えにくいことがありますので、その観点では分散しておくことのメリットはあるでしょう。
ただ、投資の数を増やすためには、それに比例した相当数の投資機会を検討しなければなりませんし、そのような潜在的な機会を一から探すのは容易ではないでしょう。かといって、数を優先して、デューデリジェンスの質が落ちてしまっては、本末転倒です。
人的リソースの余裕度、投資の目的にも拠りますが、全体的な手間とクオリティのバランスを取るために、単独での投資と共同投資を織り交ぜることも選択肢となります。コミットメントの強い投資機会は、単独で推進し、他者からのノウハウ獲得や新しいマーケットでの実績を狙う目的で、マイノリティでの共同投資を組み合わせるといった具合です。
では、短期間で効率的に数を積み上げるのはどのような方法が望ましいのでしょうか。
持分買取による共同投資
一つ目の切り口は、既に組成されている投資機会の持分(セルダウン持分)を、既存の保有者から買い取る方法です。その保有者(ないし、投資の組成者)の信頼性に左右されるケースもありますが、一通りのデューデリジェンスを経た上で、投資しているはずですから、自らスクリーニングする手間を一定程度省くことができます。
その手間の時間を買って、途中から投資に参加させてもらうことになるので、その分、その既存保有者よりは、高い価格での投資元本の譲受となるものの、人的リソース等のコストがかからない分と比較して、合理的な範囲内の価格差、手数料であれば、投資判断として悪くはないでしょう。
ただ、その既存保有者が引き続きその投資機会に継続関与するかどうか、という点には留意しなければなりません。基本的には、その既存保有者の持分の全部売却でなければ、引き続きその投資機会の成功への経済的インセンティブが残るはずです。金額の多寡にも拠りますが、高く売り抜けられてしまう(高値掴みしてしまう)ことだけは、万が一のトラブルに巻き込まれないためにも、避けるべきです。
この手法が上手く機能し始めると良いところは、その既存保有者との反復取引が期待できることです。一度、型ができてしまえば、加速度的に投資件数を増やすことができるでしょう。
対象国の拡大
同種の投資モデルで、徐々に対象国を増やすのも選択肢として考えられます。国によって法律や会計のルールが異なるので、それに合わせた調整や管理コスト増加は、避けられませんが対象国を増やすことで、絶対的な投資機会の検討数を増やせること、複数国での分散効果が得られることは有益です。
マイノリティの小口投資
冒頭に書いた通り、投資件数が増えてくると、どうしても管理が行き届きにくくなる懸念があります。自らが主導しなければならない投資だと、リソースを考えた時に無理なオペレーションになってしまうリスクがあります。
マイノリティかつ小口であれば、主導的にコントロールはできないものの、管理オペレーションの負担をかなり軽くすることができます。投資意思決定のハードルも相対的には下がることでしょう。それに経済的リスクの割合、金額が小さければ、最悪の場合でも、損失を許容範囲内でコントロールできます。小口であれば、他の共同投資者に買い取ってもらえる可能性も高まります。