海外投資において、借入、レバレッジは有効かつ現実的なのでしょうか。まず、一般的に担保価値が認められる投資対象でないと、外国人が投資対象国現地で借入を行うことは、簡単ではありません。端的に言うと、信用されていないからです。ただ、現地の共同投資家が存在する場合や、実績のある企業、投資家の場合は、可能なケースはあります。
もう一つの良くあるパターンとしては、国内の信用力、担保を使って、本邦国内で借入を行い、その資金を海外投資の原資に回す方法です(もしくは、国内の信用力、担保を使って、海外で外貨ベースで直接借入を行う方法です)。但し、この方法は国内において、借入ができるビジネスをしているか、担保になる資産を保有していなければなりませんので、個人レベルではハードルが高いかもしれません。
そもそも借入が現実的にできるかどうか、という問題もありますが、借入すること自体が海外投資において有効な手段なのでしょうか。
国と通貨と金利
対象国がどこか、投資通貨は何か、金利がどれくらいか。それらによって、大きく状況が変わります。基本的に、先進国で使われる主要通貨で投資する場合には、借入のメリットがあるでしょう。投資機会の期待リターンが余程低くない限りは、レバレッジ効果を得られますし、流動性の比較的高い通貨になるはずなので、通貨間の換金リスクが低くなります。
為替の動きが激しいと、投資実行と回収のタイミングによって想定外に借入が膨らむリスクがあるので、注意が必要ですが、主要通貨であれば相応の範囲に収まることが考えられます。また、投資対象とも通貨が一致していれば、その割合については為替ヘッジをしているとも言えます。
一方で、新興国をはじめとした比較的高金利の国での借入にはメリットが少ないケースが多いかもしれません。期待リターンが相当高くないと、逆のレバレッジになってしまう懸念がありますし、新興国の通貨は為替相場の安定性、流動性に欠けることがあるためです。
先進国向けでは、借入のレバレッジを活用して、少ない自己資金で期待リターンを高められる可能性がありますが、新興国向けでは、借入なしに自己資金のみで相応の期待リターンを求めざるを得ないケースが多くなるでしょう。
遅延リスク
過去に十分なトラックレコードがあるような手堅い投資機会ではない場合、その投資機会からの回収が遅れる場合を想定する必要があります。遅れるということは、借入した分の金利負担が増えることを意味します。
投資期間中にキャッシュフローを生み出す種類の投資であって、そのキャッシュフローで金利負担をカバーできる場合は、回収が遅れても、それほど影響は大きくないかもしれません(時間の経過によって、IRRベースのリターンが落ちる可能性はあります)。しかし、期中のキャッシュフローがない(少ない)場合、その遅れた分の資産含み益の増加が見込めない場合は、期待リターンの減少だけでなく、資金ショートのリスクが生じます。このような借入(特に金利水準が高い借入)は、避けた方が無難です。
リコースの回避
借入の中でも、個人や投資元以外の法人にリコースされる借入(ローン)は極力避けるべきです。特に、本質的にその投資対象物の処分で借入の返済が可能な投資の種類においては、なおさらです。そのリコースによって、想定外のところで足元をすくわれる危険性(クロスデフォルト等)が生じるためです。借入する場合には、常にリコースか、ノンリコースかを確認し、不用意なリスクを取らないようにすることが望まれます。