専門家が語る、海外投資における先進国と新興国のコストパフォーマンス

一般的にリスクは高いが、リターンも大きいというのが新興国への投資のイメージでしょう。確かに経済成長率で比較すると、先進国より高いですし、土地のように伝統的な資産の価格が短期間で数倍になるようなケースは珍しくありません。それによって、短期間で財を成した投資家が多いのも事実です。

新興国への投資において、リスクを取って、一発当てにいく戦略をポートフォリオの一部として持っておくことは悪くないかもしれません。一方で、リスク・リターンが共に相応に高いが、リターンの天井に構造上、ある程度限界のある投資機会には注意が必要です。想定以上にコストと時間が膨らむ可能性が相対的に高く、下手をするとあっという間にリターンを削られてしまいます。

表面的な投資リターンは、それほど高くなくても、様々な面で効率的で、レバレッジのかかる先進国向けの投資機会の方が、実質的な結果、コストパフォーマンスは良いというパターンも往々にしてあるのです。

煩雑な各種手続

一般的には、新興国より先進国の方が行政手続がしっかりしていて、属人的な対応を含め、不確実性が少ないでしょう。比較論にはなりますが、時間的にもスムーズに物事が進みます。オンライン手続きの普及の面でもリードしています。

万が一係争が発生した時の解決までの時間や、透明性においても先進国の方が優位となります。個別性はあるものの、源泉税等の税務面でのロスが少ないことも有利な点と考えられます。

新興国におけるクロスボーダー取引では、そもそも業務にあたる行政を含めた取引関係者が不慣れな場合が多いことや、法体系が実務に追いついていなかったり、何かと不安定な要素があることは否めません。投資ストラクチャーが複雑になると、全てがオーダーメイドになってしまい、デューデリジェンス費用等の初期コストも嵩みます。

その意味では、ある程度の型が決まっている場合は、先進国向け投資の方が、コスト的にも時間的にも有利と言えるでしょう。

金利水準とレバレッジ

借入可能な投資事業の場合、先進国向け投資の方が資金調達の面で、工夫の幅が広がるでしょう。先進国では低金利の状況が長らく継続していて、仮に投資機会の利回りがそれほど高くなくても、レバレッジを効かせることによって、より高い投資リターンを目指すことができます。

また、レバレッジを効かせられるということは、投資対象の価値に対して、必要な自己資金を減らせることを意味します。つまり、結果として同じ自己資金の量でも、多くの投資機会に投資することが可能となります。

一方で、新興国の場合は絶対的な金利水準が高いことも多く、借入のリスクを取ることが合理的でないケースがかなりあります。資金潤沢な投資家にとっては、全額現金で投資するのが標準的になっていることもあるほどです。そのような属性の投資家であれば、レバレッジなしでも積極的に投資の数を増やせますが、限られた資金で効率的に運用するような場合には向かないかもしれません。

流動性と時間コスト

時間軸を加味したIRRを投資リターンの基準にしている場合、その投資機会自体の流動性や、上述の各種手続きに気をつけたいものです。投資の種類にもよりますが、一般的には先進国の投資の方が相対的に取引量が多く、流動性が確保できていますし、手続きがスムーズと考えられます。

つまり、先進国の方が不用意に時間だけ経過してしまうリスクが低く、時間の経過によって発生するコストが、投資リターンを圧迫するケースを減らすことができます。新興国の投資では、複雑に拗れてドツボにはまってしまうと、簡単にエグジットできないことが珍しくありません。


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