専門家が語る、海外投資のストラクチャー構築で最初に考えること

海外投資のストラクチャーは複雑怪奇で、合法的に節税するために使われているというイメージがあるかもしれません。ただ、実際にそのような複雑な仕組みを作れるのは、莫大な金額の投資規模で、構築するための各種専門家(一流の弁護士事務所、会計事務所等)に高い報酬を払っても、コスト倒れしない環境であることが前提です。

個人レベルや、一定規模以下の運用では、よりシンプルな投資ストラクチャーの方が、有利な場合が多いと思われます。ジョイントベンチャーのように、投資のリスクを切り分けなければならない場合は、ある程度仕方がないケースもありますが、下手に複雑化すると、想像以上にペーパーワークが発生したり、維持管理コストが膨らみます。

結果的に節税できたとしても、維持管理コストが増えて、結果があまり変わらないなら、シンプルな方が、手間や税務リスクが少なく、より望ましいストラクチャーになるはずです。そもそも、ビジネスがグローバル化している現代において、中小規模において考え得る抜け道は塞がれていると言って良いでしょう。二重課税は避ける必要がありますが、それ以上はコストをかけて、税務リスクを抱えるだけになってしまう可能性が高いのです。

それでは実際に、どのような観点を考慮しておくのが良いでしょうか。

投資主体の居住地

個人の場合、法人の場合の両方がありますが、どこの国に居住性を持っているかによって、課税関係が変わる可能性があるので、留意が必要です。投資から出る利益を個人で直接受け取る場合は、居住地によって適用される所得税率が変わってきます。

法人であっても、安心してはいけません。投資事業以外の業務がなく、その法人が設立されている国に居住している取締役や従業員が、その法人に所属していないような場合、その国の居住性を否定されてしまう危険性があるのです。

実質的な便益者(個人や法人の株主)の居住地も絡めての課税関係が発生してしまうと、二重課税等になるリスクも高まります。

資金の出所

資金をどの国から拠出していくかということも、期待リターンを考える上で重要な観点です。無理やり他国に資金を移す必要はないのですが(それ自体に手間やコスト等がかかるので)、どこから資金を拠出するかによって、源泉税の有無(と多寡)や外国資本規制の有無が異なることを覚えておかなければなりません。

二重課税を防ぐための租税条約があったとしても、源泉税があると幾分かは利益が削られます。国によって、納税のタイミングの違いもあるので、キャッシュフローの観点も考慮する必要があるでしょう。

また、特に新興国を中心に、外国資本規制には注意を払うことが重要です。為替の交換や、国外送金に制限があったり、法人の支配権に制約があったりするためです。資金拠出した後に、その資金を想定通りに動かせないと気づくようなことがあってはならないのです。

再投資の有無

中長期的な投資を前提とするのであれば、再投資を想定した投資ストラクチャーを念頭においておく方が懸命です。なぜなら、その投資ストラクチャーを再利用、重複利用することで各種リスクやコストを抑えることが可能になるからです。

海外投資の場合、国を跨いで資金が行ったり来たりしたり、為替換算が頻繁に発生すると、その分、投資元本や利益が目減りしていく懸念があります。実額やパーセンテージとしては小さくても、それが積み重なると無視できない金額になることもあります。

投資ストラクチャーを再利用、重複利用できるとその分、初期のセットアップコストや事務的な業務にかかる費用を節約できるでしょう。投資ヴィークルが増えると、管理が煩雑になりやすい上、様々な維持費も馬鹿にならないので、効率化できるところは徹底的にそうするべきなのです。


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