大抵の場合、投資リターンは投資実行する時に、決まると言っても過言ではないでしょう。
投資を実際に実行する前に、綿密な検証をして、得られる期待リターンの幅を算出しているはずです。スタートアップ投資を除いた場合、投機的な要素がない限り、基本的にはそこで得られた数字から、大幅な下方修正はあっても、大幅な上方修正になる可能性は少ないのです。
最初が肝心
事業・資産向けの海外投資においては、最初の段階で、どのような形で進めるかによって、勝てる可能性のある戦に挑むか、ほぼ確実に負ける戦に無謀にも果敢に挑むか、に分かれてしまうでしょう。つまり、最初が極めて肝心なのです。
なぜなら、投資を実行するまでは、資金を提供する投資家の立場として、比較的強い交渉力がありますし、また、資金の種類、投資ストラクチャー、契約書類等をどのように作りこむかによって、投資した後の各種権利や、不測の事態が生じた場合の選択肢が、大きく変わってくるためです。
仮に、やや高値掴みの経済条件で、投資実行してしまったとしても、投資家の権利がきちんと守られる契約になっていれば、その投資のエグジットまでの道筋を立てることができるでしょう。他方、投資家としてのコントロールの権利が弱い場合は、利益が出るような組み立てになっていたとしても、実際に資金回収するまでに、他人の力に依存しなければならず、相当の手間や時間を要することもあり得ます。
前提条件の置き方
投資機会のデューデリジェンスの過程で、どれだけの精度の前提条件を置けるか、ということが、期待する投資リターンを実現できるかどうかに直結します。何より重要なことは、現実的に起こる可能性が高い条件で、仮説検証を行うことです。
期待リターンありきで、無理やりに前提条件を逆算していくような方法には注意が必要です。見た目には美しい見通しになりますが、同時に起こりえない前提条件が設定されてしまったり、細かいところを見ていくと、至る所に歪が生じる懸念があります。
一方で、保守的過ぎる前提条件を置いてしまうことにも、問題があります。せっかく良い投資機会に遭遇しても、石橋を叩いて壊して、見送ってしまっては意味がありません。現実的なベースシナリオを軸にしながら、ワーストケースとしてのレベル感を想定しておくくらいがちょうど良いのです。
下方修正との戦い
下方修正に対する備えは、常に意識をしなければなりません。上方修正の場合は、事業シナリオを策定する段階で、それが実現される時の条件が、あらかじめ判明しているケースがほとんどかと思われます。アップサイドの要因は、比較的予測しやすいということです。
それに比べて下方修正は、突発的な出来事によって発生することがあります。特に、グローバルベースでのマクロ経済や、コロナウィルスによるビジネス環境の急激な変化等です。投資がエグジットを迎えるまで、当初期待していたリターンがどこまで下がるのを食い止められるか(IRRで測定する場合、継続的なプラスのリターンがなければ、時間の経過と共に、その結果指標は悪化してしまいます。)という観点で、危機感を持って管理していくことが望まれます。