専門家が語る、海外投資の為替リスクとヘッジの必要性

基本的に、事業・資産向け海外投資において為替ヘッジが必要なケースは少ないと考えられます。

投資家のポートフォリオ全体のバランスにもよりますが、そもそも海外投資がポートフォリオの主たる部分を占めている可能性は少なく、分散投資の一環で行われることが多いためです。経済的なリスク負担が相対的に小さく、分散投資の要素があるならば、あえて追加コストを負担したり、手間をかけて自国通貨に合わせる必要はないのです。

もちろん、為替水準によっては今が絶好のタイミングではないという場合もあるでしょう。ただ、それは投資期間にもよりますし、投資した資金を対象通貨で再投資していく方針かどうか、継続的に新たな投資資金を投入していくかどうかによっても見方が変わります。

ドル・コスト平均法の考え方のように、定期的に新たな投資を実行していくのであれば、為替レートは平均化されるので、大きな為替差益損が出にくくなります。また、再投資を前提にしていれば、会計上の含み損益は出るものの、実損益は発生しません。利益を対象通貨のまま、消費する場合、為替差損はあまり気にならないはずです。

マイナー通貨

米ドル、ユーロのような流動性のある通貨であれば、投資エグジット時の換金性や為替レートに大きな懸念はないでしょう。

一方で、投資対象国の通貨が、マイナー通貨の場合、為替レートがその国の経済単体に影響されることにもなるので注意が必要です。特に新興国通貨は、激しい変動が起きる可能性があるほか、換金時の手数料コストが重くのしかかることがあります。せっかくの投資リターンを為替だけを要因に台無しにするわけにいきません。

代替案として、投資対象国の通貨がマイナー通貨であっても、米ドルのような主要通貨で取引することが考えられます。現地通貨が存在しても、投資ビジネスでは主要通貨を採用することも珍しくありません。資金調達する側が、為替リスクを負うことになりますが、条件次第で十分な実現性があります。

多通貨の採用

自国通貨と他国一通貨を前提にしてしまうと、その通貨との間の為替レートのみから直接的な影響を受けてしまいますが、投資対象が増えてくると、複数の外国通貨での投資になることも十分に考えられます。

複数の外国通貨の為替レートが、必ずしも同じ方向に動くとは限りません。一方が弱くなっても、他方が強くなれば、全体としては自国通貨に対する影響は限定的になります。つまり、むりやり自国通貨での為替ヘッジをしなくても、変動幅のリスクを減らす方法はあるのです。

ヘッジコスト

最後に、為替リスクのコストについて検討してみると、一般的には決して安くはならないでしょう。通貨間の金利差によりますが、ケースによっては、期待リターンをほとんど吹き飛ばしてしまうような本末転倒な事態になる可能性もあります。

投資リターンを自国通貨に戻す際の為替ヘッジには適用できませんが、絶対的な為替水準が好ましい場合、かつ将来的に反復的な追加投資が想定される場合は、外国通貨を買う為替予約をあらかじめしておくというのも賢い選択肢です。自国通貨との金利差が大きければ、より有利な為替レートを抑えることが可能になります。


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