専門家が語る、稼げない海外投資の3つの罠

投資機会を提供する立場、仲介する立場からすると、より魅力的な投資機会に見せるために、できる限り大きな利回りをうたい、長所ばかりを強調しがち(短所を隠そうとしがち)になります。当事者の心理を考えれば止むを得ない面はあります。誇大広告や、合法的な範囲を超える見せ方は論外ですが、注釈が大量に付いていたり、一般的な投資家からはわかりにくい説明になっている場合も少なくありません。

国内取引であれば、事例の確認も含めて、それらの投資機会の本質を見極めることが比較的容易にできるものの、海外投資では直接的に比較できるものが少なかったり、その国独特の取引慣行が把握できていないと、思わぬ落とし穴に引っかかる可能性があります。例えば、以下のいくつかの観点には、細心の注意を払いたいものです。

グロスとネット

国内とは法律が違いますから、利回りの表現の仕方が異なることは良くあります。特にネットの明記がなければ、大抵はグロスと解釈して間違いないでしょう。問題は、グロスとネットの差がどれくらいあるかです。

例えば、グロス(表面利回り)では10%の利回りなのに、ネット(正味利回り)になるまでの必要経費が少なくなく、ネットだとその半分の5%になってしまうとします。その国で再投資せず、利益分配を受ける場合は、源泉税等でさらに利回りを削られる可能性があるのです。

一定期間の収入保証(利回り保証)がついているようなケースでも同様です。年率5%のグロス利回り保証がついていても、蓋を開ければ、実質的な利回り(手残り)は僅かということもあり得るのです。

また、グロスとネットの利回りを算出するための投資元本についても、注意深くなる必要があります。投資した元本の価値が適正でなければ(実際の価値が低い場合)、いくらグロスの利回りが高くても、実質的には元本を取り崩して配当しているようなものです。表面的な数字に踊らされて、足元をすくわれては元の子もありません。

楽観シナリオ

投資対象の評価の際に、楽観的な観測に基づいたデータのみが使われている場合は要注意です。良くあるパターンではありますが、そのベストな状態が起こらなければ、維持できなれば、期待利回りは達成できないことになります。つまり、達成できる確率が初めからかなり低いのです。

そのような楽観シナリオに基づいて算出された評価額をベースに投資してしまうと、失敗が約束されたようなものです。

基本的には、3種類(楽観、標準、悲観)のシナリオを準備するのが望ましいでしょう。そして、悲観シナリオが起こったとしても、耐えられると思えるレベル感で投資を検討すべきです。コントロールできない不測の事態が起きた時は、その悲観シナリオを下回る結果になるリスクは残りますが、現実的に起こる確率の低い事象をいくら織り込んでもキリがないので、保守的なシナリオになりすぎないことも重要です。

時間的制約

エグジットまでの時間が決まっている等、時間的制約のある投資機会には、基本的には手を出さない方が良いでしょう。楽観シナリオの考え方と似ていますが、その時間的制約の中で、達成しなければならないことが順調に進まなければ、最終的に投資した元本を二束三文で手放さなくてはならないという事態に追い込まれるかもしれないからです。

大抵の場合、バーゲーンディールは時間的に不利な立場に置かれた人から出てくるものです。足元を見られて、買い叩かれる立場になってはならないのです。


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