専門家が語る、結局はキャッシュリターンの予測と管理が大事な理由

事業計画や投資計画を策定、管理する時には、必ずと言っていいほど、会計ベースとキャッシュベースの両方の尺度で、それらの評価をすることになるでしょう。どちらも大事な考え方ではあるのですが、会計ベースの結果をより重視する上場企業等でない限り、海外投資においてはキャッシュベースで、個別の投資機会を検討することが望ましいと考えられます。

なぜなら、投資リターンとして、手元に残って再投資、分配の原資となるは通常、キャッシュであり、会計上の利益が出ていようが、投資家のエグジット時の最終的な果実は、流動性の高い資産であるべきだからです。

キャッシュを確り管理できていれば、不測の事態が生じても、動じずに対処できることでしょう。

単純明快

会計ベースの損益は、各国の会計基準やその解釈によって、前提条件が揃えば、合法的に大きく増減させることが可能です。そのような対応はM&A等の投資活動においては意味が大きく、役に立つこともあります。

一方で、ある程度の限定的なスケールで、単体の投資機会として個別の事業や資産に投資していく場合は、会計上の数字ではなく、実質的な投資リターンの方に重点が移ります。キャッシュの出入り、残高は、単純明快で他に解釈の余地がないので、その投資をシンプルに評価することが可能です。

投資計画の策定や管理の面でも、数字の整理が容易になりますし、説得力があります。頻度にもよりますが決算のタイミングを待たずとも、結果の測定と比較(予算と実績の対比)を効率的に進めることができます。キャッシュの動きをモニタリングすることで、投資リターンをより実感することができるのも嬉しいことです。

資金繰りへの影響

企業経営における黒字倒産のように、利益は出ていてもキャッシュが足りないという状況は、投資活動においても起こり得ます。例えば、資産向け投資で、資産自体には含み益が出ているのに、キャッシュインフローが十分でなく、維持経費、不測のコストを支払うだけのキャッシュが手元にないようなケースです。

そのような場合で、追加出資に対応できないと、強制的に権利・資産の処分を迫らりたり、不利な条件に追い込まれかねません。せっかく途中まで上手くいっていた投資が失敗してしまっては元の子もありません。キャッシュフローの心配をはじめから取り除いておけば、その手のリスクに気を取られずに、他のことに集中できます。

課題発見の早期化

実行した投資を管理する視点に立つと、キャッシュフロー、キャッシュリターンのモニタリングは、問題の兆候をより早く察知するのに役立ちます。特に会計ベースでしか進捗を見ていないと、会計上は問題ないように見えても、実際には未実現利益が多く含まれている場合があります。資産の含み益や未実現の為替差益などがその典型でしょう。

上述の通り、キャッシュベースは単純明快で、嘘のつきようがありません。課題の発見が早まれば、打つ手の選択肢が増えます。投資活動においては、しばしば時間的制約が取引関係者のパワーバランスを崩し、投資リターンに致命的なダメージを与えます。手元キャッシュを原因に、そのような時間的制約を作りたくないものです。


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