投資は関わる立場によって、目の前に現れる投資機会の捉え方、リスクの考え方、判断の仕方が変わると言って間違いありません。
例えば、とある法人の投資活動に参画し、それに従業員の立場として携わっているとします。その場合、投資の経済的リスクを取っているのは、通常その従業員ではなく、法人そのもの(株主)です。さらにその株主が特定少数個人の場合もありますし、上場企業となれば、法人含め不特定多数かもしれません。
何が起こるかと言うと、従業員の立場となると、本人が持つ本来のリスク感覚より、保守的な検討になったり、逆に一か八かでリスクを取りに行くような判断がなされる懸念があります。何らかの経済的インセンティブをつけることで、その影響を可能な限り排除することはできると考えられますが、自らが投資の経済的リスクを負って行う場合と比べると、リスク感覚の違いを完全に消し去ることはできません。
個人レベルの投資(法人を使った事業オーナーの投資を含む)を超えてしまうと、投資の目的や投資規模、投資主体の制約から、自らが投資の経済的リスクを負うことができない場合が多いことも事実ですが、自らリスクと取るという意識を持てるかどうかが成功の鍵でもあると考えられます。他人事になった(と思った)瞬間に、最後の一歩の詰めの意識が甘くなりますし、状況が悪くなった時に死に物狂いの対応にならないでしょう。
本気になる、気付く
自己資金がかかっていると思うと、誰もが真剣になります。プロスペクト理論に示されるように、リスクに晒された状況下においては、損失を避けたいと思うのが人間の心理です。真剣でない投資なんか存在しない、と言いたいところですが、相当金額の自己資金を投じると本気度が違います。
本気度が違えば、自然と緻密になります。緻密になれば、通常以上に多い気付きが得られることでしょう。小さなリスクと思っても、そこに危険の種がないか調べたくなりますし、今できる予防策を取るようになります。結果として、管理が行き届くようになって、その投資の成功確率を押し上げることにつながるのです。
結果への満足度
自己資金を投じた投資機会に真剣になればなるほど、その検討、実行、管理プロセスで納得感を得ながら、投資活動を進めることができたはずです。つまり、成功しようが失敗しようが、その結果を受け止めやすいと言えます。上手くいった場合の満足度は格別でしょう。
もし、自らが経済的リスクを負っていなければ、失敗した場合、責任回避のために外部環境のせいにしてしまうかもしれませんし、成功しても、ダイレクトな経済的なインセンティブがなければ、中途半端な満足感になるかもしれません。
信頼関係の構築
海外への直接投資の場合、周りの取引関係者の協力が不可欠となります。経済的なリスクを負っている投資家と見られるか、そうでないかで、大きく印象が変わってしまう、これは避けられないことです。
実際に資金を拠出する投資家の立場であれば、信頼関係、中長期的な取引関係を構築しやすくなるでしょう。取引関係者としても、意思決定ができる投資家との直接のコミュニケーション関係を望んでいるからです。