長期にわたる金融緩和の恩恵で、資金潤沢な企業、金融機関、投資家がいる一方で、なかなか思うように資金調達できない企業や投資家が存在しているのも事実です。これは、手掛けている事業、投資のリスクの違いだけが原因とは一概には言い切れないでしょう。
考えられる原因を、定量と定性の両面で検証すると共通点があるものです。似たような事業、投資を推進しているのに資金調達の難易度が変わるのはなぜでしょうか。それは、単に説明の仕方の問題だけではありません。
ストーリーがない
経営理念がはっきりしない企業にピンとこないように、投資後の将来ストーリーが描けていない投資機会は魅力的に見えません。必ずしも壮大な夢を語る必要はないのですが、その投資機会が成功するまでの建設的な道筋、合理的な仮定がなければ、絵に描いた餅になってしまうのです。
また、ストーリーの組み立てがしっかりしていないと、その投資実行の意義を語るにも気持ちが入っていないように見えるでしょう。そこに十分な熱量がなければ、資金を提供する立場からすると不安になってしまうのです。
見える化されていない
ストーリーがあっても、事業・投資計画の中身が荒削りだったり、十分な情報開示をせず、相手にとって不透明に見えてしまう場合は、それが意図的かそうでないかにかかわらず、資金調達に苦戦することでしょう。
耳障りの良いストーリーを語っても、信ぴょう性のある内容がなければ、人を説得するのは容易ではありません。特に現実味のある数字、ロジックに基づいていることが重要ですし、その投資機会のリスクが、多面的な視野で検証され、整理されている必要があります。
また、見える化することは自らの頭の整理にも役立ちます。よくわからない状態で投資を実行するのではなく、自分自身でその投資機会を分析し、まとめることで納得のいく意思決定に結びつけることができるのです。自分が納得、正確に理解できていないものを、他人に説明するのは難しいものです。
類似条件の事例がない
未知のものに対して身構えてしまうのは、誰にでもありえることです。一方で、完全に新しくてユニークな投資機会というのは限定的と言えるかもしれません。つまり、大抵の場合は類似の条件が揃った比較可能な事例があるはずなのです。
そのような比較可能な事例と照らし合わせて、無理な資金調達条件を望んでも、余程の信用力がない限り、無謀な要求になってしまいます。自らがそう思っていなくても、資金提供側から見れば一目瞭然なケースが多いことでしょう。なぜなら、その業界のプロであればある程、同様の事例を沢山見ているからです。
その意味では、まず似たような事例がないか、どういった資金調達がマーケットで実現しているのか、情報収集、分析することが先決です。そして、合理的な水準での資金調達を望めば、きっと上手くいくはずなのです。