投資活動において、性善説に基づいて意思決定するか、性悪説に基づいて意思決定するか、迷う場面が数多く訪れるでしょう。特に、海外投資においては物理的な距離、心理的な距離があるので、より一層そう感じてもおかしくありません。その選択を大きく間違うと、とんでもない結果につながることさえあります。
信条としては、全て性善説で進めたいところですが、損得が絡み合う投資の世界において、周囲の言うことを全て鵜呑みにしていたら、真っ先に食い物にされてしまうことは、想像に難くありません。
慎重になりすぎては、チャンスを逃してしまう恐れがあるものの、基本的には納得いくまで自分の目で検証することが重要です。ただ、論理だけでは説明しきれないことも出てきます。時には、最後は感覚に頼って、思い切った意思決定をしなければならない局面もあるでしょう。
良い意味で疑う
何でもかんでも疑っていたら、投資活動を進めるのに膨大な時間とコストがかかってしまいますし、何より投資される側や取引関係者との間の厚い信頼関係を構築するのが難しくなります。信頼されているかどうかは、案外簡単に相手に察知されるものです。
海外投資の場合は、文化や環境の背景が違う外国人とやりとりをすることになるので、そもそも、悪意がなくても、共通認識がずれることが良くあります。日本のように単一的な民族が国や文化を形成している場合は、暗黙の了解も含め、多くを説明しなくても相互理解において、間違えが起きる確率は相対的に下がります。
その点で、海外投資においては、つまらない小さなことでも、後から余計な心配をするくらいなら聞いて、確認しておくべきなのです。むしろ、投資される側や取引関係者も、クロスボーダー取引に携わる人は、文化的背景が違うこと等を理解していますし、聞かれることに慣れている場合がほとんどです。
わからないこと、不明瞭なこと、疑っていることを、善意をもって尋ねる分には何ら支障はありません。
詐欺的取引の回避
いくら注意を払っていても、情報として入ってくる投資機会には、玉石混交の部分が少なからずあります。
上手すぎる話は、そう簡単にはありませんし、詐欺的取引がいつまでたってもなくならないのは、十分な検証をできずに、重要な部分を性善説に基づいて投資判断しているケースが、まだまだ世の中に沢山存在するということでもあると考えられます。一歩引いて落ち着いて考えると、疑わなくてはならないリスクが見えてくることがあるでしょう。
意思決定課題の軽重
意思決定課題の軽重によって、使い分けるということも考え方のひとつです。
全てを疑っていたらキリがないので、投資のパフォーマンスに大きく影響しないものについては、基本的には性善説に立って、意思決定していくという方法です。これで上手くいくに越したことはありませんし、万が一失敗したら、以後その点に関しては慎重になれば良いのです。